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鉄筋コンクリートはりの付着に対する検討式(黄色本2020より)


武居です。

黄色本(構造関係技術基準解説書)2020年版の付録には
3種類のRC部材の付着に対する検討式について、記述されています。
■荒川式 (付1.3-6)式、(付1.3-7)式、(付1.3-16)式
■RC規準2018 16条「付着および継手」1項「付着」(3)
■靭性保証型指針 (文献(8))6.8節「付着に対する設計」

この記事では、付録の記述からはりについてを抜粋しました。
(点線の枠内)

1. 共通事項

「建築物の構造関係技術基準解説書2020」
 令和2年10月26日 第1版第1刷発行
付録1-3.1 鉄筋コンクリート部材の力学モデルに関する技術資料 (656頁~)
本付録で用いる「終局強度」は、政令や告示及びそれらの解説で用いられている各部材の「耐力」(曲げ耐力、せん断耐力など)に対応している。(656頁19行~)
1)鉄筋コンクリート計算規準・同解説の位置づけ
日本建築学会「鉄筋コンクリート計算規準・同解説2018」(以下RC規準2018)における
使用性の確保及び損傷制御の検討の目的は
それぞれ長期及び短期に生ずる力に対する検討の目的にほぼ対応している。
また、RC規準2018における安全性の確保のための許容せん断力を
終局時の検討に用いることも可能であるが、
耐力壁の許容せん断力や開口低減率のように、
耐震計算ルートや条件により適用できない場合があることに注意しなければならない。
(656頁25行~)

2. 長期・短期の検討式

ここから、まず一次設計レベルについて
■RC規準2018 16条「付着および継手」1項「付着」(3)に言及されています。

(1) はり
① ~略~
② ~略~
③ 許容耐力
 a) ~略~
 b) ~略~
 c)付着
RC規準2018、16条「付着および継手」1項「付着」(3)
1)2)~ を満足することで
引張鉄筋(スパン途中で定着される引張鉄筋(カットオフ筋)も含む)の
付着に関する許容応力度計算を満足するものとできる。
なお同項(3)
3)に示される大地震時に対する安全性確保のための検討を
短期の付着に関する検討に替えることはできない (657頁30行~)
RC規準2018、16条「付着および継手」1項「付着」(3)

3. 終局時の検討式

1つめは
■靭性保証型指針 (文献(8))6.8節「付着に対する設計」について

⑥終局強度
 a) ~略~
 b) ~略~
 c) 付着
付着割裂強度の算定式としては(付1.3-20)式
文献(8)に提案されているので参照するとよい。(661頁21行~)

※(付1.3-20)式は柱に関する記述内の式なので、以下に(2)柱の記述を抜粋します。
※文献(8)は靭性保証型指針を示す。(文献リストは706頁)

(2)柱
① ~略~
② ~略~
③ ~略~
④ ~略~
⑤ ~略~
⑥ 終局強度
 a) ~略~
 b) ~略~
 c) ~略~
 d) 付着
文献(8)6.8節「付着に対する設計」によれば、
柱及びはりの主筋の付着信頼強度は
次の(付1.3-20)式及び(付1.3-21)式によることができる。
これらの推定式は、中子筋などの副補強筋の効果を適切に評価できる式とされている。
このとき設計用付着応力度 τf は(付1.3-22)式によることとし、
設計用付着応力度が付着信頼強度を下回ることを確認することで、
柱およびはりの付着割裂破壊に対する安全性の検討とすることができる。

(668頁14行~)

2つめは
■荒川式 (付1.3-6)式、(付1.3-7)式、(付1.3-16)式について

柱およびはりのせん断終局強度推定式である
(付1.3-6)式、(付1.3-7)式、(付1.3-16)式は、
付着割裂した試験体を含む実験結果から導出された式であり、
それぞれの式による計算値を
柱及びはりの付着割裂破壊に対する安全性の検討に用いてよい。(668頁35行~)

※(付1.3-6)式、(付1.3-7)式、(付1.3-16)式は下記(荒川式)

3つ目は
■RC規準2018 16条「付着および継手」1項「付着」(3)について

またRC規準(2018)16条「付着および継手」1項「付着」(3)
3)に示される大地震動に対する安全性確保のための検討を
付着割裂破壊に対する安全性の検討とすることができる。
(668頁38行~)

4. カットオフ筋を有するはり

最後にカットオフ筋を有するはりについて、記述されています。

なお、カットオフ筋を有する柱及びはりに対しては

(付1.3-20)式~(付1.3-22)式を用いて付着割裂破壊に対する安全性の検討を行ってもよい。

またRC規準(2018)16条「付着および継手」1項「付着」(3)
3)に大地震動に対する安全性確保のための検討が示されているので、参照するとよい。

ただし、(付1.3-6)式、(付1.3-7)式、(付1.3-16)式は、
カットオフ筋を有する柱及びはりの付着割裂破壊に対する安全性の検討に用いることはできない。
(669頁2行~)

上記より
カットオフ筋を有するはりの、終局時の付着に対する検討について
〇 靭性保証型  
〇 RC規準2018 
× 荒川式    
と読めるかと思います。
※検討式の適用条件はカットオフ筋の有無以外にもありますので、それぞれ要確認

5. 補足

終局の検討式は複数あり、なにを採用するかは建物ごとに設計者が選択できます。
審査機関などへ、説明することも比較的多いので
見つけやすくするために、ページ数と行も併記してまとめました。

ちなみにRC規準(2018)の冒頭に「第12次改定の序」として下記のように記述されています。

RC規準2018「第12次改定の序」より

付着の検討:今回の改定で簡略化が図られたが、より一層の簡略化、合理化が望まれる。

研究もまだまだ進行中と思われます。
次回の改定が、楽しみです。

以上

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